東証の新市場区分 ②

さて今回は東証の新市場区分のIPOに関する影響です。

従来、スタートアップ企業の多くがIPOを目指す市場は東証マザーズでした。

東証マザーズは成長過程にある企業にリスクマネーを供給するという役割から、利益面での形式基準は設けられていませんでした。
新市場において多くのスタートアップ企業が目指す市場はグロース市場になると予想されますが、こちらについてもマザーズ市場と同様、利益面での形式基準は無く、むしろその他の形式基準である流通株式数や株主数などはマザーズより緩やかな基準となっております。

それなら以前よりIPOし易くなったのでは?と思われる方も多いでしょう。
しかしながら問題は前回お話ししたプライム市場へのハードルがIPOにおいても大きな影響を与えることになるのです。

従前、マザーズ上場会社が本則1部市場に上場(市場変更)する場合、時価総額40億円、利益は2年間で5億円以上の利益が必要であり、上場後の業績が良好であればマザーズ上場後数年で東証1部銘柄となることが可能でした。

一方、新市場におけるプライム市場の形式基準は2年間の利益基準が25億円以上と各段に高くなってしまいました。
また前回お話しした通り、通常の流動比率の場合、時価総額を285億円程度まであげなければいけなくなりました。

このことはグロース市場上場後も継続的な成長を続けて業績を拡大し続けなければプライム市場銘柄になることは難しく、上場ゴールのIPOではずっと個人投資家主体のグロース市場に留まり、セカンドファイナンスなど上場のメリットを享受できない事になってしまいます。

また引受主幹事証券としても上場後、IPOだけでなく上場後のPOやM&Aなどのコーポレートファイナンスの提案ができる可能性のある企業を優先するため、IPOの主幹事の引受に際して、これまで以上に一定水準以上の事業規模を求めるようになると予想されます。

これからIPOを目指す企業はAfter IPOのコーポレートストーリーをこれまで以上に具体的に組み立てて上場を目指す必要があります。
そのためにはIPOの資金をどの領域に投入するか。またIPO後に事業の中心メンバーが離脱してしまわないように、そして上場後も優秀な人材が獲得できるようなインセンティブ手段を確保しておく必要があるのです。

まさにIPOはゴールではなく通過点であるという言葉をより現実のものとするのが、今回の新しい市場区分であるとご理解いただけると思います。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です