SPAC上場②~デメリット

皆さんこんにちは。
前回のSPAC上場のメリットに続き、今回はSPAC上場の問題点についてです。

前回の説明の通りSPAC自体には事業の実体は無く、他社の買収を目的として組成されたペーパーカンパニーであることをお伝えしました。
では、投資家は沢山あるSPACのうちどれを投資対象として選べばよいのでしょうか。
ここでポイントになるのはSPACを主催するスポンサーの存在です。
スポンサーはSPACを主催し、買収ターゲットの発掘やM&Aの交渉を進める中心的な存在です。
このためスポンサーは著名なエンジェルやキャピタリストなど、ベンチャーのエコシステムの住人が担ううことが多く、彼らのネットワークやベンチャーへの交渉力を期待して投資家達はSPACへの出資に応じるのです。

1.コンフリクト
そういったスポンサーは得てしてSPACとは別に自身が率いるVCや個人として色々なスタートアップに投資を行っています。
SPACの買収対象となる候補企業と、スポンサー自身の投資先は両社とも成長企業が対象となるので、得てしてSPACのターゲット企業とスポンサーの投資先が重なることも少なくありません。
そのような時にスポンサーがSPACの利益を最優先に、意思決定するかどうかは誰も確認することはできません。
ケースによっては自身が投資した会社のEXITとしてSPACが利用される可能性もあるわけです。

2.上場の適格性の審査
SPAC自体の上場は単なるお金の塊に過ぎないので見るべきものは特に無く、SPAC自体の上場審査における論点は少ないといえます。
しかしながらターゲット企業が決まり合併が決定すると当然、当該ターゲット企業への証券取引所による審査は通常のIPOの時と同様に行われることになります。
そのためSPACだと上場審査が楽とかいう認識は実態を表していないといえます。
現状の制度においても上場会社が自社の規模に比して大きい未上場会社を買収する時は上場審査並みの「不適当な合併等」の審査が実施されています。

3.コスト
確かにすでに上場しているSPACによって買収されることで上場が果たされるので、新しく株式を募集することはなく、証券会社に対する引受手数料は発生しません。
しかしながら合併に際して証券会社やアドバイザーに対して支払うFA費用。そしてなによりスポンサーに優先的に充てられるSPAC上場後の20%シェアは、ターゲット企業そしてその創業者にとっては、非常に大きなコストであるといえます。

以上の3点からSPAC上場で考えられる問題点を解説しました。
米国などSPAC上場が制度化されている市場を目指す場合は、これまで述べてきたメリット・デメリットを勘案してその是非をご判断いただけばよいと考えます。

一方、日本におけるSPAC上場の解禁については個人的には懐疑的です。
理由としては
・個人投資家にSPACのリスクを理解し、それを踏まえたうえでの投資判断ができる投資家の層が育っていないこと。
・SPAC上場に際して一般投資家の資金を集めれるほどの影響力を持ったスポンサーは限られていること。
・そもそも起業家やエンジェル、その支援者らによるベンチャーのエコシステムは日本においてはまだまだ発展途上であること。
といった日本特有の事情があるからです。

それでもD2Cのサービスのように事業が盛り上がったタイミングにタイムリーにIPOできる環境は個人的にも必要であると考えており、既存の制度の見直しを含めて引続き提言していきたいと思います。

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