皆さんこんにちは。
2021年8月13日付の日経新聞で、コロプラ元副社長の千葉功太郎氏が社外取締役を務める、日本のスタートアップを買収ターゲットとする「ポノ・キャピタル」というSPACが米国NASDAQに上場したとの報道がありました。
このSPAC(Special Purpose Acquisition Company)。日本語で「特別買収目的会社」と呼ばれますが、他社の買収を目的として組成されたペーパーカンパニーであり、自社で何か事業を行っているわけではありません。
将来的に成長の期待できるスタートアップを見つけ出し、そのターゲット企業の買収を目指することを目的とする会社なのです。
そんな実態の無い会社が上場できる点が米国資本市場のダイナミックな点でもありますが、このSPACが生まれてきた背景を考えたいと思います。
1.成長企業へのアクセス
日本でも未上場企業による巨額な資金調達が時折話題になりますが、一般の個人投資家がそれら上場前のスタートアップに投資をする機会はほとんどありません。当然、早い段階で投資できれば成長に伴い大きなキャピタルゲインが期待できますが、そういった成長企業がそもそもどこにあるのか、またその存在を発見したとしても出資をするには当該会社との間に共通の知り合いが必要です。
SPACは投資家サイドに未上場の成長企業への投資を株式市場を通して行えるというメリットを提供します。また成長企業にとっても、これまでのエンジェルやVC以外のエクイティ調達が可能になるというメリットを手に入れることができるのです。
2.ビジネスサイクルの早期化
通常のIPOは本格的な準備をスタートして最低3年程度の準備期間を要します。
インターネットの普及で特定のビジネスアイディアやノウハウがその発明者に独占できる時間は極めて短くなりました。
思いついたアイディアをいち早く事業化し、他社に先んじて拡大することで市場優位性を勝ち取るためには、この3年間の時間があまりにも長すぎると感じる起業家もいるでしょう。
SAPCの場合、すでに上場している主体との合併であり、取引所等の上場適格性の審査は必要なものの、従来のIPOに比べて短時間での上場が可能となります。このことが特にビジネスサイクルの早いスタートアップにとって魅力的に映るといえるでしょう。
3.IPOコスト
IPOの場合、上場時の新株発行や既存の株主の保有株の売出については証券会社がそれらを引受け、投資家に販売します。
販売に際しては証券会社へ卸した価格(引受価額)と投資家が購入する金額(公開価格)の差額が証券会社に対する引受手数料になります。
一方SPACについては既に上場時に出資が行われており、あらたに証券会社が株式を募集する必要がありません。そのためIPOにおける引受手数料の分、IPOコストが安く上がりことになります。
こういった背景を見るにSPAC上場は上場しようとする企業側、そして投資家側双方にとってメリットのある仕組みと感じてしまうのではないでしょうか。
ただその反面、SPAC上場にはいくつかの問題点も指摘されています。
次回はSPAC上場の問題点について、お伝えしたいと思います。